3か月のトライアルが終わりました。現場の評価は上々で、センター長も「みんなもう使い慣れた」と言っている。数字も期待以上です。あとは見積もり、交渉、契約へと進むはずでした。ところが1か月たっても、窓口担当者の答えは「社内で検討中です」。その後、話はぱったり止まりました。
BtoB営業で最もよくあり、最も戸惑う状況の一つです。PoCが成功したまま本導入に進まない、いわゆる「PoC死」と呼ばれることもあります。試用はうまくいったのに、何が問題なのでしょうか。
成功した試用が証明するのは、製品が使えるということです。組織が購入する準備ができていることまでは証明しません。そして、この二つを決めるのは別の人たちです。
この記事では、試用を本導入につなげるために満たすべき4つの条件と、すでに試用が終わっている場合にそれぞれをどう立て直すかを解説します。そして最も重要な部分として、試用を始める前に何を合意しておくべきだったかも整理します。多くの読者は、この記事にたどり着いた時点でその機会を逃しています。しかし、次の試用では逃す必要はありません。
試用が答える問いと、購入が答える問いは違う
試用が答えるのは「この製品は、自社の環境で使えるか」という問いです。この問いに答えるのは、実際に使う現場の担当者とその上長です。
購入が答えるのは「この費用をかけ、導入のリスクを負い、いまのやり方を変える準備ができているか」という問いです。この問いに答えるのは、予算の責任者、情報システムやセキュリティの担当部門、法務、購買、そして最終的な決裁者です。
試用がうまくいくほど、一つ目の問いの答えははっきりします。しかし二つ目の問いは、試用期間中に誰にも問われていないことがよくあります。試用が終わると、案件は製品を使った人たちの手を離れ、試用中に一度も登場しなかった人たちの手に渡ります。彼らが目にするのは3か月分の好評ではなく、突然現れた新しい支出です。
試用を受注につなげる4つの条件
| 条件 | 試用前に確認すべきこと | 試用後に気づいたときの状況 | いまからの立て直し方 |
|---|---|---|---|
| 誰が成功を定義したのか、その人に決裁権はあるか | 成功の基準を誰が決め、決裁者が同意しているか | 現場は成功と言うが、決裁者は「見たいのはその指標ではない」と言う | 決裁者が重視する指標を確認し、試用のデータで答え直す |
| 予算は試用前に確保されていたか、試用後に探し始めたか | 本導入に対応する予算科目と年度があるか | 「試用は良かったが、今年度は予算がない」 | 次の予算策定に合わせ、利用部門に早めに要望を出してもらう |
| 試用中に不在だった部門はどこか | 情報システム、セキュリティ、法務、購買が参加または把握しているか | 試用が終わってから、セキュリティ審査や契約書の確認が始まる | 不在だった部門をいますぐ巻き込み、必要な資料を届ける |
| 試用のデータは、投資判断の根拠をどう変えるか | 投資判断を支えるためにどのデータを集めるか | 利用範囲が想定より狭い、またはデータを事業上の価値に換算できない | 試用のデータを決裁者の言葉に置き換える |
一、誰が成功を定義したのか、その人に決裁権はあるか
試用の成功基準は、営業と現場が一緒に決めることが多いものです。システムが安定している、操作しやすい、利用者の満足度が高い。こうした基準は試用中に達成しやすい一方で、決裁者が重視していることとは限りません。
最終的に決める人が気にしているのは、コストが下がるのか、業務時間が短くなるのか、リスクが減るのか、かもしれません。試用を始めるときに誰も「この試用が成功したら、何が確認できればよいですか」と聞いていなければ、試用が終わったとき、決裁者が見るデータは、その人の問いにまったく答えていないかもしれません。
**いまからの立て直し方:**社内の推進者に、最終的な決裁者が何を重視しているかを率直に聞いてください。そのうえで、試用のデータがその問いに答えられるかを確かめます。答えられるなら1枚の資料にまとめましょう。答えられないなら、追加の検証が必要かどうかを正直に話し合うことです。
二、予算は試用前に確保されていたか、試用後に探し始めたか
試用後に最もよく起こる止まり方です。試用は無償か低額のことが多いため、本導入となった場合の予算をどこから出すのか、確認しないまま始めてしまう組織が少なくありません。
予算が試用前に確保されていれば、試用が成功した時点で購買の手続きに進めます。試用後に予算を探し始めるなら、案件は組織の予算サイクルに最初から乗ることになります。運が良ければ次の予算策定に間に合いますが、そうでなければ1年待つことになります。
**いまからの立て直し方:**この支出がどの予算に属するのか、次の予算策定はいつか、誰が要望を出すのかを確認し、その時期までに利用部門から要望を出してもらいましょう。機器やシステムであれば、一度きりの設備投資なのか、継続的な運用費なのかも確かめておきます。両者は稟議の流れが違うことがよくあります。
三、試用中に不在だった部門はどこか
試用期間中に関わるのは、たいてい現場の担当者とその上長だけです。しかし本導入となれば、情報システム、セキュリティ、法務、購買、経理の承認が必要になることがあります。これらの部門は試用を見ておらず、製品についての印象もないまま、短期間で可否を判断するよう求められます。
そこで起きることは予想がつきます。セキュリティ部門は見たことのない資料を求め、法務は契約書を開いてデータの取り扱いの条項を見直したいと言い、購買はこの金額なら相見積もりが必要だと言う。どれも時間がかかり、現場の熱意では解決できません。
**いまからの立て直し方:**本導入の承認に関わる部門をすべて書き出し、試用中に関わっていなかった部門に印をつけ、求められる前に必要な資料を届けましょう。見落とされやすい部門を見つける方法は、案件が止まる前に、見落としているステークホルダーを見つける方法で解説しています。
四、試用のデータは、投資判断の根拠をどう変えるか
試用のデータは最も強い根拠ですが、逆に投資判断の根拠を弱めてしまうこともあります。
ある部署ではよく使われたが、ほかの部署ではほとんど使われなかったことがデータでわかり、本導入の範囲が縮小されることがあります。あるいは、利用者が満足していることは証明できても、決裁者が気にする指標、つまり削減できた時間、減らせたミス、避けられたリスクに換算できないこともあります。
**いまからの立て直し方:**試用のデータを読み直し、「自分が決裁者なら、このデータを見て買いたくなるか、迷うか」と自問してください。そのうえで、データを決裁者の言葉に置き換えます。「利用者満足度4.6点」よりも、「週に何時間の手作業が減ったか」のほうがはるかに説得力があります。
試用を始める前に合意しておくべき5つのこと
ここまでの4つの条件は、どれも試用を始める前に手を打つことができます。これから新しい試用を始めるなら、次の5つを事前に顧客と合意し、できれば書面に残しておきましょう。
- **成功の基準は何で、誰がそれを認めるのか。**現場の感触だけでなく、決裁者が重視する具体的な指標です。
- **試用が成功したら、その後どうなるのか。**購買の手続き、予算の出どころ、想定される時期です。
- **どの部門が参加し、状況を把握するのか。**情報システム、セキュリティ、法務、購買が、試用中から検討を始めるかどうかです。
- **どんなデータを集めるのか。**製品が使えることを示すだけでなく、決裁者の問いに直接答えられるデータです。
- **試用はいつ終わり、その後いつ判断するのか。**判断の時期をはっきり決めておけば、試用がずるずる延びるのを防げます。
この5つについて合意できないなら、それ自体が一つのシグナルです。顧客はまだ購入する準備ができておらず、試用は情報収集の一環なのかもしれません。それが悪いとは限りません。しかし、それを知るべきなのは試用が終わった後ではなく、始める前です。
4つの条件で、止まった試用を読み直す
以下は仮想のシナリオです。 ある営業担当者が、中堅の物流会社に倉庫の作業計画システムを提案し、物流センターの一つで3か月の試用を行いました。センター長は大満足で、ピッキングの生産性もはっきり上がりました。ところが試用が終わってから、案件は2か月止まっています。
営業担当者は4つの条件を一つずつ確かめました。
| 条件 | 実際の状況 |
|---|---|
| 誰が成功を定義したか | 成功基準はセンター長が決め、オペレーション担当の執行役員は一度も関わっていない。執行役員が重視しているのは全社の人件費 |
| 予算 | 試用前に予算を確認しておらず、今年度のシステム予算はすでに使い切っている |
| 不在だった部門 | 情報システム部門と法務は試用に関わっておらず、いまになってシステム連携とデータの条項の確認を始めた |
| 試用のデータ | 一つのセンターでの効果は示せたが、ほかのセンターに広げた場合の効果は示せていない |
4つのどれも「製品が良くない」という話ではありません。次の一手ははっきりしています。センター長に執行役員を紹介してもらい、試用のデータから全社の人件費への効果を試算する。来年度の予算策定の時期を確認する。システム連携の資料とデータの条項を、求められる前に情報システム部門と法務に届ける。これらを試用の前に合意できていれば、試用が終わったその日に、契約の準備が整っていたかもしれません。
試用の後、顧客からまったく反応がなくなった場合は顧客が急に沈黙したとき:動かない案件をどう読み解くかを参考にしてください。医療機器を扱っている場合、病院での試用と委員会には独自のルールがあります。診療材料委員会:何が審議され、どう準備するかもあわせてご覧ください。
試用の成功は、すべての部門が通ったという意味ではない
SFAの上では、「試用成功」は一つのフェーズにすぎず、案件がかなり先まで進んでいるように見えます。実際には、現場に関わるユニットは通っていても、事業判断と承認に関わるユニットはまだ手つかずかもしれません。
VINEQRA は、案件を顧客社内の意思決定ユニットに分け、それぞれにステータスを持たせる iOS アプリです。試用が終わったとき、どのユニットが通っていて、どのユニットにまだ接点がないのかがはっきりわかり、ボトルネックに応じた次のアクションも提案されます。判断するのはあなたです。
この考え方は、期間が長く、複数の部門が関わるあらゆる案件に当てはまります。全体の枠組みは複雑なBtoB営業:長期化する商談が実際に前へ進む仕組みで解説しています。
よくある質問
PoCは成功したのに、なぜ本導入に進まないのですか?
PoCが証明するのは製品が使えることであり、本導入には組織が購入する準備ができている必要があるからです。後者を決めるのは、予算の責任者、情報システム、セキュリティ、法務、購買、そして最終的な決裁者であり、こうした人たちは試用に関わっていないことが少なくありません。
PoCが終わったら、次に何をすべきですか?
4つの条件を確認しましょう。成功の基準に決裁者が同意しているか、予算が確保されているか、まだ関わっていない部門はどこか、試用のデータが投資判断を支えられるか。満たされていない条件から手をつけます。
試用を始める前に、顧客と何を合意しておくべきですか?
少なくとも5つです。成功の基準と、それを誰が認めるのか。成功した場合の購買手続き、予算、時期。参加する部門。集めるデータ。そして、試用の後いつ判断するのかです。
顧客が試用の延長を繰り返す場合は、どうすればいいですか?
延長はたいてい、何かの条件がまだ解決していないことを意味します。予算が見つかっていない、決裁者が納得していない、などです。延長に応じる前に、延長で何を確かめたいのか、確かめた後に誰が判断するのかを聞きましょう。
試用中に情報システム部門や法務を関わらせるべきですか?
できれば早い段階から状況を共有しておくことをおすすめします。本導入の際には、彼らの承認が必要になることがほとんどです。試用が終わってから初めて接点を持つと、その審査で案件が何か月も止まることがあります。